保護者の疑問にヤナギサワ事務主査が答えます。|第12回|保護者アンケートにどう答えたらいいの?|栁澤靖明

保護者の疑問にヤナギサワ事務主査が答えます。 栁澤靖明 学校にあふれるナゾの活動、お金のかかるあれこれ⋯⋯「それ、必要なの?」に現役学校事務職員が答えます。

学校にあふれるナゾの活動、お金のかかるあれこれ⋯⋯、「それ、必要なの?」に現役学校事務職員が答えます。

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第12回
保護者アンケートにどう答えたらいいの?

 みなさん、こんにちは。──年の瀬ですね。1月から始まった連載も12回目を迎えました。みなさんの疑問にしっかり答えられているでしょうか? 忌憚ない意見を出版社までお寄せいただきたく……、とは思いますが、アンケート機能やコメント機能はついていませんでしたね。このように、みなさんもイベント参加や施設利用により各種アンケートを求められたことがあると思います。

 この連載でも何度か紹介したように、学校も12月前後に「保護者アンケート」を実施しています。このアンケートに答えるなかで、①そのアンケートで思っていることをどのように伝えればよいのか、②どのていどまで伝えてもよいのか、③それを学校はどのように受けとめているのか、といった疑問が浮かんだことはないでしょうか?

 今回は、この3つの疑問について答えていきましょう。


♪ いっしょにLet’s study about it. ♪


 まず、学校がアンケートを実施している根拠をちょっとだけ説明しておきます。

 2007年に「学校評価」という制度が法律に規定されました(学校教育法第42条)。それは、教育活動や学校運営の状況を評価し、改善措置を講じて教育水準の向上に努めるためです。では、だれが評価をするのかというと、学校自身と学校の関係者それぞれです。これを専門用語で自己評価と学校関係者評価といいます。学校が自身を自己評価し、それを客観的な立場で関係者が評価を重ねるイメージをもっていただければOKです。

 そして、今回の主役であるアンケートは、学校が自己を評価する過程で実施され、子どもたちに授業の理解度などを聞いたり、保護者の意見や要望を把握したりします。後者を保護者アンケートといったり、保護者評価といったりします。

 さて、本題に入りましょう。

 連載の第2回「そんなにいろいろな靴、必要ですか?」で、「上履き」にも教室・廊下用と体育館用があり、2足も必要ですか? と投げかけました。そのときの最後で保護者アンケートが登場しています。今回は、具体的に「上履きへの意見」を切り口とし、アンケートに対する上の3つの疑問を解消していきます。

 まず、意見や疑問の書き方です。アンケートは大きく分けて①紙媒体による丸つけ方式、②同じく紙媒体ですがマークシート方式、③GoogleフォームやMicrosoft Formsなどをつかったウェブ方式があります。それらに自由記述欄がある場合はストレートに意見を書くこともできます。

「上履きの件です。成長期ということもあり、毎年買いかえが必要ですし、2足購入すると経済的にもそれなりの負担です。どちらかに統一できませんか?」

 また、ターゲットを広げて書いてみたり、変化球でストライクをとるような書き方をしてみたりしてもいいと思います。

「上履きだけで2足もあると、靴箱などの置き場も必要ですし、それ以前に履きかえの指導や管理で先生方もたいへんではないでしょうか? どちらかに統一できれば、履きかえる子ども、指導する先生方の負担も減るのではないでしょうか? さらに、家庭の経済的負担も減ります。一石三鳥です」

 ここで問題になるのは、記述欄を用意していないアンケート形式です。マークシート方式によくあるパターンですが、この場合はどうしましょうか……。学校が用意した設問に対する達成度を評価することしかできなくなってしまいます。そんなときは、別紙や裏面を活用してもいいんです。ハードルが高いように感じるかもしれませんが、連絡帳に伝言を書くような気軽さで記入してもいいと思いますよ。

Googleフォームでのアンケート画面。
自由記述欄がなければ
連絡帳に書きましょう。

 つぎに、どのていどまで書いていいのかという疑問ですね。

「ヤナギサワ事務主査を辞めさせてほしいです」

 ……というような意見を書くアンケートではありません(笑)。自由記述といっても、なんでも書けるわけではございませぬ! 重なりますが、教育活動や学校運営の状況について評価するためのアンケートです。逆にいえば、その領域は広いとも考えられます。

 一般的なアンケートでは、「学校は、わかりやすい授業づくりに努めている」「学校は、いじめのない学校づくりに努めている」などといった、学習面や生活指導面に対する設問が多いです。そのため、それ以外の記述を書きづらい雰囲気もあります。

 しかし、補助教材や学校指定品などに対する設問、施設や設備などに対する設問のような費用面に触れているアンケートもあります。こんなアンケートだったら記述欄にも、「年に数回しか使わない柔道着ですが、数千円しました。レンタルやリユースという方法も導入できないでしょうか?」「宿泊行事のとき、ジャージ(上下で1万円)を買い増しする習慣があるようです。そのときは必要でも行事後はそんなにいらないと思います。指定ジャージ以外を認めてもらえないでしょうか?」というような、費用面に対する意見を書くことができそうです。

 また、「授業参観のときにトイレを使用しました。和式ばかりで正直おどろきました。洋式の増設はできませんか?」「伝統ある校舎を大事に使っている状況は理解できます。しかし、GIGAスクールにより、タブレットを使うことも増えてくると思います。教科書を読むときよりも明るさが必要になると思いますが、足りているのでしょうか?」というような、学習環境にもふれられそうです。

 3つめは、アンケートに書かれた意見を学校はどのように受け止めるのかという疑問です。正直なところ、学校間格差はあるでしょう……。また、意見や疑問への応答方法もさまざまです。たとえば、一問一答形式でまとめたプリントを配付する、学校だよりなどに一部を掲載する、最近はウェブ掲載も多いですね。

 ただ、この時点では具体的な改善方策が示されることは少なく、現状の分析と展望のようなコメントが大半だと思います。その後、新年度を迎えるまでに改善方法の方向性や具体的な改善事項を検討していきます。たとえ、学校だよりなどに一部しか意見やコメントが掲載されていない場合でも、校内会議用の資料はつくられ、意見は共有されています。安心してください。

 そして、いただいた意見を校務分掌ごとに割り振ります。たとえば、柔道着の件なら教科担当部会の体育科、ジャージの件なら該当学年や生活指導担当、さらに費用面もかかわってくるため事務職員が加わります。このような流れで、いただいた意見をもとに改善措置を考え、教育水準の向上に向けた努力をしていきます。

 最後に、いちばん重要なことを。アンケートのお知らせを子どもに持ち帰らせる(カバンから出させる)──これがないとスタートラインにも立てません(笑)。

 

栁澤靖明(やなぎさわ・やすあき)
埼玉県の公立小中学校(小・7年、中・12年)で事務職員として勤務。「事務職員の仕事を事務室の外に開く」をモットーに、事務室だより『でんしょ鳩』などで、教職員・保護者・子ども・地域へ情報を発信し、就学支援制度の周知や保護者負担金の撤廃に向けて取り組む。ライフワークとして、「教育の機会均等・無償性」「子どもの権利」「PTA活動」などを研究。おもな著書に『学校徴収金は絶対に減らせます。』(学事出版、2019年)、『本当の学校事務の話をしよう』(太郎次郎社エディタス、2016年、日本教育事務学会「学術研究賞」)、共著に『隠れ教育費』(太郎次郎社エディタス、2019年、日本教育事務学会「研究奨励賞」)など。