保護者の疑問にヤナギサワ事務主査が答えます。|第27回|学校とナプキン──無料配布? 学校設置?|栁澤靖明

保護者の疑問にヤナギサワ事務主査が答えます。 栁澤靖明 学校にあふれるナゾの活動、お金のかかるあれこれ⋯⋯「それ、必要なの?」に現役学校事務職員が答えます。

学校にあふれるナゾの活動、お金のかかるあれこれ⋯⋯、「それ、必要なの?」に現役学校事務職員が答えます。

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第27回
学校とナプキン
──無料配布? 学校設置?

 

 

 

 「『学校でのナプキン常備』望む声も。Z世代1228人、生理アンケート」(TBSラジオ『TALK ABOUT』)という記事があります。生理用品の購入費用やその周辺における困ったことなどを聞いたアンケートです。

 この調査によると、「生理用品で困ったことはある?」という問いに対し、約7割にあたる848人が「ある」と回答されています。その具体的な状況でもっとも多かったのが「学校や外出先で急に生理が来た」(321人)、次いで「漏れ」(175人)「お金がかかる」(68人)「学校などでトイレへ持っていく際、周囲の目が気になる」(48人)「授業中やバイト中など、ナプキンを変えるタイミングがない」(46人)でした。このように学校と生理に関する困苦は多いようです。

 学校に対する意見や要望もあります。「いつも応急処置でトイレットペーパーを挟んでナプキンを取りに行きますが大分焦ります。学校によっては設置しておいてくれている所もあるみたいでとても羨ましいです」「ナプキンを持っていない友達に予備のナプキンをあげたら、自分も生理が始まりナプキンが無くて困りました」「学校で生理来た時はどうしようって凄く焦った。学校にナプキンが常備されてたらいいのにって毎回思ってました」。

 経済的な理由などにより、ナプキンを購入できないという「生理の貧困」も大きな社会課題になっています。一般社団法人JOYでは「#生理用品無料配布プロジェクト」を立ち上げ、商業施設や公共施設、学校に生理用品を無料で配布する取組を広げているそうです。

……ナプキン、奥が深いですね。しかし、困っている子どもたちがいる、それにこたえて、無料配布に取組んでいる団体がある。そんななかで学校や保護者にできることを考えていきます。

 

♪ いっしょにLet’s think about it. ♪


 たとえば、埼玉県川口市では「生理用品・配布用消耗品」という公費予算が配当されています。また、教育委員会事務局(学校保健課)よりナプキンの現物支給もあります。これにより、各学校の状況や工夫により子どもたちに向けたナプキンの無料提供が可能です。

 しかし、ここで問題が2点あります。①受益者負担の意識、②生徒指導の観点です。

 まず、①から検討してみましょう。家に持ち帰るもの、個人で使うものは受益者負担=私費とするべきという論調からすれば、ナプキンは受益者負担の例としてわかりやすすぎるのかもしれません。ナプキンの無料配布はいかがなものか──という声もあがります。受益者負担論をベースにすれば、公費で用意したナプキンはあくまでも緊急避難的な提供とされ、借りたら返すという約束にしているところもあります。

 そして、②の生徒指導です。この観点もどんな取り組みにおいてもかならず検討するのが学校という組織です。施設設備物品にかかわることだと、おもに管理面を検討します。ナプキンでいえば、トイレに常設したら「いたずら」されるんじゃないか、不必要な分まで「持ち帰る」んじゃないか──という議論が勃発しそうです。だから、折衷案として保健室で管理し、借りたら返すという約束につながるんでしょうね。

 しかし、それでいいのか。

「生理の貧困」が社会的にクローズアップされ、隠れていた問題が明るみになってきたことで救われている子どもたちがいることでしょう。10年前は「生理用品・配布用消耗品」なんていう予算はついていませんでしたし、学校の考えや工夫によるところが大きかったですね。わたしも要望や必要に応じて、サニタリーショーツやナプキンを公費で購入していたことがあります。

トイレットペーパーと同様の運用にするのが望ましい

「生理の貧困」問題に関する記事をいろいろ読んでいると、トイレットペーパーほどの使用頻度ではないけど、「そのとき」への対応はナプキンもトイレットペーパーと同じくらい重要であり、必要なアイテムだと感じました。その状況や冒頭アンケートを考慮すれば、トイレットペーパーと同じく、それぞれの個室にナプキンを設置することが望ましいと考えます。「いたずら」されるからトイレットペーパーを設置せず、保健室まで取りに行くということはありえませんよね。

 個室設置した場合でも使用は自由とし、不足したら補充していけばいいことです。また、受益者負担論を考慮するのなら、使用したら「お気持ち」(強制ではない)で返却するというシステムにしてもいいと思います。サイズとか羽根つきとかという機能の差はよくわかりませんけど……あくまでも「お気持ち」制度でじゅうぶんだと考えます。

 じゃ、その提案をどうするか。保護者にできることはあるのか。

 女性教職員とつながることが近道かもしれません。担任や学年、部活動とのかかわりで相談できるひとがいるといいですね。女性教職員自身も助かる場面がありそうですから、提案しやすいのではないでしょうか。また、お金にかかわることでもありますし、事務職員への相談も可能でしょう。ですが、職務ともマッチしていますし、保健室という相談しやすい環境もあるので、養護教諭に相談するのがベストかもしれません。最近は男性養護教諭も増えてきているようですが、まだまだ女性が多いです。まずは、保健室に相談してみましょう。もちろん、いつもの保護者アンケートでもいいし、子どもアンケートを活用して、直接伝えることもできそうですね。

「生理の貧困」解決・緩和に向けて動いてみませんか?

 

栁澤靖明(やなぎさわ・やすあき)
埼玉県の小学校(7年)と中学校(13年)に事務職員として勤務。「事務職員の仕事を事務室の外へ開き、教育社会問題の解決に教育事務領域から寄与する」をモットーに、教職員・保護者・子ども・地域、そして現代社会へ情報を発信。研究関心は、家庭の教育費負担・修学支援制度。具体的には、「教育の機会均等と無償性」「子どもの権利」「PTA活動」などをライフワークとして研究している。「隠れ教育費」研究室・チーフディレクター。おもな著書に『学校徴収金は絶対に減らせます。』(学事出版、2019年)、『本当の学校事務の話をしよう』(太郎次郎社エディタス、2016年、日本教育事務学会「学術研究賞」)、共著に『隠れ教育費』(太郎次郎社エディタス、2019年、日本教育事務学会「研究奨励賞」)など。