保護者の疑問にヤナギサワ事務主幹が答えます。|第7回|学級閉鎖中の給食費、返ってくるの?|栁澤靖明

保護者の疑問にヤナギサワ事務主幹が答えます。 栁澤靖明 学校にあふれる「それ、どうなの?」に現役学校事務職員がていねいに答えます。保護者を助けるいろいろな制度も紹介。

学校にあふれる「それ、どうなの?」に現役学校事務職員がていねいに答えます。保護者を助けるいろいろな制度も紹介。 

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第7回
学級閉鎖中の給食費、返ってくるの?
栁澤靖明

 

 主幹エディションでは、偶数月の掲載になったので「新年あけまして⋯⋯」というあいさつがそぐわなくなりました。しかも、ボクの誕生日は1月なので年を重ねたことも祝えません。だからって連載自体には関係ありませんし、どうってこともないですけど、ひとことだけ──ひとつ年を重ねても四捨五入すればまだ40歳。でもウデは上がらないし、ヒジも腱鞘炎(けんしょうえん)です。ちなみにヒザもコシも痛いので日々お休みしたい今日このごろ⋯⋯ということで、まだ動けるうちに「お休みの話」をしましょうか。

 数年まえなら、「インフルエンザで学級閉鎖!」なんていうニュースは、2月に入ってからでしたよね(だから、ドタキャンが怖く、2月の講演依頼は受けない主義でした)。でも、最近は早いですね。昨年の11月ころなんて毎日毎日「◎◎学校:×日のみインフルエンザによる学級閉鎖」「○○学校:×日~△日までインフルエンザによる学級閉鎖」という情報が飛び交っていました(ボクが勤務している自治体には、市内の情報が共有されるシステムあり)。

 さて、今月は「学級閉鎖」によって食べられなかった給食の費用が戻ってくるのか、どうなのか⋯⋯? そもそも、それはだれが決めるのか? このあたりの疑問にこたえていきましょう。 

♪ Together──Let’s think about it. ♪

 まず、学級閉鎖とはなにか、から解決していきましょう。さすがに説明はいらないかもしれませんけど、念のため──学級が閉鎖されることです(笑)。かんたんに定義しましたが、これは意外とすごいことなんですよ。閉鎖というのはシャットダウンですから、学校に来ちゃダメ! と学校側が強要するわけです。⋯⋯ということは法令に定めがあるわけですね。調べてみましょう。

 学校保健安全法には、「感染症の予防」という章がおかれ、出席停止と臨時休業について定めています。前者の出席停止は、「校長は、感染症にかかつており、かかつている疑いがあり、又はかかるおそれのある児童生徒等があるときは、政令で定めるところにより、出席を停止させることができる」とされ、校長がその「おそれのある」子どもも含めて出席停止にできます(第19条)。政令とは、学校保健安全法施行令のことで「理由及び期間を(⋯)保護者に」伝えることも定めています(第6条)。そして、その「期間」は文部科学省令=学校保健安全法施行規則で「種類等に応じて」決められ、たとえばインフルエンザの場合は「発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(⋯)を経過するまで」とされています(第19条第2項イ)。これは「発症した」場合であり、「疑い」や「おそれ」の場合は、「学校医」などから「意見を聞いて適当と認める期間」となっています(同第4項以下)。ちょっとややこしくなってきましたが、これは「出席停止」であり、個人を対象としたシャットダウンですね。

 後者の臨時休業(以降、学級閉鎖)は、集団を対象としたシャットダウンであり、学校保健安全法では「学校の設置者は、感染症の予防上必要があるときは、臨時に、学校の全部又は一部の休業を行うことができる」と定められています(第20条)。これが学級閉鎖の根拠とされる条文です。

 でも、学級閉鎖にはそれ以外の定めがありません。とくに「期間」が書いていないんです。しかも、校長じゃなくて「学校の設置者」(=市区町村立学校の場合は市区町村=管理運営を任されている執行機関としての教育委員会)が決めるんですね。そうはいっても教育委員会から指令が来ることはめったになく、校長から教育委員会事務局の担当課へ相談するという感じです。コロナのときは、首相→文部科学省→都道府県(教育委員会)→市区町村(教育委員会)→校長という“なんとも緊急事態すぎ”的なことはありましたけど、本来は市区町村教育委員会と校長の関係になります。

「期間」など、条件の話に戻りましょう。たとえば、兵庫県神戸市では「欠席率が高くなった(15~20%が目安)場合に、学級閉鎖とし」、その「期間は5日間を基本」とすることがウェブサイトに載っていました。また、北海道札幌市の基準は「同一の学級又は学年で(⋯)各在籍数の20%以上に達した時」とし、その「措置決定を判断した日の翌日から原則3日間」としています。そう、「学級」だけではなく「学年」閉鎖もありうるのです。東京都中野区は「同一の学級において、関連する複数の児童生徒等の感染が判明した場合」などと割合を示さないこともあります(期間は「5日から7日程度を目安」)。

 前提の説明が長くなっちゃいました──給食費の話に移りましょう。

 ポイントは、教育委員会の強制がともなっていることです(出席停止も校長の強制はともないますが、保護者への連絡も強制ですから反論できるかもしれません)。学校給食法によれば、給食の実施主体も「学校の設置者」です(第4条)。主体が同じだし、強制力をともなってシャットダウンする(食べたくても食べさせてくれない)んだから、返金してくれそうですよね。それじゃ、近場で調べてみましょう。

 千葉県木更津市では、木更津市学校給食費管理規則により「インフルエンザ等による学級、学年又は学校の閉鎖(…)により学校給食を提供することができないときは、給食費の減額は行わないものとする」(第9条)──返金しないパターンですね。埼玉県さいたま市はウェブサイトで「Q3. 学校給食費が返金になることはありますか?」という質問に対して「A3. 災害や学級閉鎖などにより学校給食を実施しなかった場合」と回答──返金するパターンです。また、同じく返金するパターンですが、千葉県習志野市では「閉鎖が決定した日から3日後以降の欠食分が該当」という──条件付き返金パターンもありました。

 食べたくても食べさせてくれないわけですが、いろいろ事情もありそうです。習志野市のパターンから検討してみましょう。「3日後」から返金対象ということは、おそらく食材などの発注をストップすることができるんでしょうね。そのため、教育委員会もノーダメージだから、残る給食費を返金するんだと思います。さいたま市と木更津市の場合は、そのダメージの矛先が市か保護者かというちがいです。ちょっとおもしろい部分としては、さいたま市は「実施しなかった」場合とし、木更津市は「提供することができない」場合という感じで整理しています。前者は学校給食を実施しなかった=やっていないから費用も発生しないと理解でき、後者は提供することができない=やったけど食べさせることができないから費用は発生するという考えかたなんでしょうね。

 どっちがいいかっていわれたら、保護者としては返金してほしいです。食べたくても食べさせてくれないわけですからね。でも、その分を税金で補填するわけですから、納税者としてはどう考えるべきでしょうか。条件付き返金が妥当かもしれないけど、経験上では中学校の学級閉鎖って3日間も連続することはありませんでした。

 学校給食の実施主体であり、学級閉鎖の決定主体である教育委員会は頭が痛いところでしょう。

 この問題を一掃できる解決策があります。もうみなさまも想像できますよね? そう、給食費の無償化です。あ、いまは「抜本的な負担軽減」でしたね。今後の国会審議、地方自治体の動きを注視してきましょう。完全に無償化されたら、保護者負担はなくなります。学級閉鎖になったって返金問題を考えることがなくなります。「動けるうちに──」とあわててこの問題をテーマにしたのは、無償化まえのラストチャンスだったからです(笑)。いや、まだ中学校の問題もあるし、今後も引き続き考えていかねばならぬことではありますね。

Let’s think about it.

 ただ若干心配なのは、無償化した場合の財源=税金オンリーですから、その節減合理化に向けて食材などの納入業者に無理をさせないか⋯⋯ということです。業者は納入予定分を仕入れているわけですから、仕入れ後は買いとってもらうしか選択肢がありません。「店頭でなんとかしてもらえない?」とか「べつのところに卸せない?」などという状況にならないか心配です。「業者を泣かせる」ことのないような監視体制も必要でしょう。多数が笑うために少数が泣く必要はありません。

 つぎのステップとして、買いとったとしてもその食品ロスはどうしましょう。教育委員会で無償提供するわけにもいかないし、捨てちゃうのもね。ロスが多くなる場合、買いとりではなく補償金を払うという方法もありそうです。そうだとしても、残る食材のゆくえは⋯⋯。リユースできるようなイベントが開ければいいですが、そんな急には難しいでしょうし、逆にまた費用もかかりそうです。「学級閉鎖で給食パン余った 一般販売したら「懐かしい」と行列 福岡」という報道もありました。──学級閉鎖にかかる給食費返金といっても、意外と多くの問題と向きあう必要がありそうですね。

 

栁澤靖明(やなぎさわ・やすあき)
「隠れ教育費」研究室・チーフディレクター。埼玉県の小学校と中学校に事務職員として勤務。「事務職員の仕事を事務室の外へ開き、教育社会問題の解決に教育事務領域から寄与する」をモットーに、教職員・保護者・子ども・地域、そして現代社会へ情報を発信。研究関心は、家庭の教育費負担・修学支援制度。具体的には、「教育の機会均等と無償性」「子どもの権利」「PTA活動」などを研究している。
おもな著書に『学校事務職員の実務マニュアル』(明治図書)、『学校徴収金は絶対に減らせます。』『事務だよりの教科書』(ともに学事出版)、『本当の学校事務の話をしよう』(太郎次郎社エディタス、日本教育事務学会「学術研究賞」)、共著に『隠れ教育費』(太郎次郎社エディタス、日本教育事務学会「研究奨励賞」)、『教師の自腹』(東洋館出版社)、編著に『学校事務職員の仕事大全』『学校財務がよくわかる本』(ともに学事出版)など。