こんな授業があったんだ|第61回|1億タイルのうえでボール投げ〈前編〉|岡田進

1億タイルのうえでボール投げ
続・十進法と位取りの指導 〈前編〉
(小学3年生・1973 年)
岡田進
まえがき
この実践報告は前号(1974年3月号)の、〝タイルの算数って、たのしいな──十進法と位取りの原理の指導〟のつづきになります。
数も一万、十万⋯⋯のように大きくなると、瀬戸物製のタイルを使って指導することは困難です。そこで、1mm方眼紙に切りかえて、一万、十万⋯⋯一億と数の大きさを1mm方眼紙でとらえ、十進法と位取りの原理をおさえました。一万、十万⋯⋯一億という数がどんな大きさの数であるかを量としてとらえさせるとともに、こんな大きな数も一貫して十進法と位取りの原理によって構成されているのだということを、タイルづくりの作業をとおして、ハッキリと印象に残るように理解させたかったからです。
授業では方眼紙の準備に手間どったり、やっとのことでつくった一億タイルが破れたり⋯⋯という不手際もありましたが、それにもかかわらず、子どもたちにとっては3年生の勉強でもっとも思い出に残る1つであったろうと思います。
1.十万、百万、一千万のタイルをつくる
★方眼紙で10万のタイルをつくる(7月9日)★
瀬戸物タイルでは千の位の数まではつくれても、それ以上の数になるとつくるのは困難だということから、一万以上は1mm方眼紙で表わすことを話し合いできめる。

まず、1mm方眼紙を横にしてその右はしから左へ、一、十、百、千のタイルを、十進数の仕組みと位取りをたしかめながら書かせ、それを足場にして、(T:教師、P:生徒)
T「千が10集まると、数はいくつになるか知っている?」
(いっせいに)「一万です」
T「よく知ってるな」
P「だって、千円札が10枚で一万円だもん」
T「じゃあ、一万をそのタイルで表わすと、たて・よこ何cmになるかな?」
P「千のタイルの10こぶんだから、たてが10cm、よこが10cmです」
T「そうね。たてとよこが10cmの正方形になるね。じゃあ、その一万のタイルを書いてごらん」
千のタイルの左に一万のタイル(10cm×10cm)を書かせる。
T「一万はそのタイルだと、たて・よこ10cmだったね。じゃあ、一万が10集まると、何という数になるか知っている?」
P(いっせいに)「十万」
T「そうだね。十万だね。ぼくの給料は10万円よりちょっと多いんだ」
P「ぼくんちのおとうさんの給料は15万円ぐらいだよ」
P「うちのおとうさんは13万円ぐらいだって」
P「ぼくんちのカラーテレビは13万円ぐらいだったよ」
…………
と話は横道にそれる。
T「じゃあ、十万は、このタイルで表わすと、どれだけになるだろう。わかる人?」
P「一万のタイルが10cmの正方形だから、その10ばいの十万は10cmと1mのタイルになる」
P「たてが1mで、よこが10cm」
P「よこが1mで、たてが10cmでも十万だよ」
T「そうだね。10cmと1mの長方形だね。たてとよこの長さはどっちでもいいけど、ここではたてが1m、よこが10cmにすることにしよう。じゃあ、これから十万のタイルをつくろう」
方眼紙をくばって各班で十万タイルを切らせる。十万タイルを2つ3つつくったのを見はからって作業をやめさせた。
★百万のタイルをつくる★
T「十万を10集めた数は、いくつか知っている?」
P「百万」
T「そうだね。百万という数をこのタイルで表わすと、どれだけになるだろう」
P「(十万のタイルを見せて)このタイルが10だから、1mの正方形になります」
十万のタイルを10並べて、百万は1mの正方形になることを確かめ、百万タイルをつくらせる。1m×0.7mの方眼紙を各班に2枚ずつくばり、1方の紙を1m×0.3mに切り、それを、もう一方の方眼紙にのりづけして、1m×1mにする。
子どもたちは、はさみで切る子、のりをつける子、それをはりつける子と分業でやっていた。途中、つぎにやる一千万のタイルつくりでは百万のタイルがそれぞれ10枚いるので、このさい、できるだけ多くの百万タイルをつくらせておくほうがあとで楽になることに気づき、百万タイルをできるだけつくらせた。
★一千万のタイルをつくる(7月10日)★
T「まえの時間は百万タイルをつくったね。その百万が10集まると何という数になるか知っている?」
P「千万です」
P「一千万です」
T「そうね。千万だね。一千万ともいうね。その千万のタイルはどれだけの大きさだろう。これが百万だよ」
(百万タイルをもってきて示す。)
P「10mの長さになります」
P「よこが1m、たてが10mです」
T「そうだね。よこが1m、たてが10mの長いタイルになるね。じゃあ、その一千万のタイルをこれからつくろう」
各班でつくった百万タイルを全部集めて、教室と廊下で作業をはじめる。百万タイルの一方の白紙の部分をはさみで切る子、のりしろにのりをつける子、方眼の目をそろえてはりつける子と、それぞれ分業で作業を進めているが、仕事にあぶれた子もいるので、学校にある1m×0.7mの方眼紙をみんなもってきて、その子たちには百万タイルをつくらせた。こうして、一千万タイルをつくり、廊下にしくと、隣の教室の中ぐらいまでの長さになる。子どもたちは「長いなあ」と驚嘆していた。
2.大きな数の読み方・書き方
★一千万の位までの数の読み方・書き方(7月11日)★
一千万のタイルにつづいて、一億タイルをつくる予定であったが、1m×0.7mの方眼紙がもう学校にはなく、文房具屋にも少ししかないというので、一億タイルづくりはあとにまわし、千万の位までの数の読み方・書き方の指導にきりかえる。
T「一が10集まると十、十が10集まると百、百が10集まると千だね。その千が10集まるといくつになるの?」
こげ茶の台紙にはりつけた一、十、百……百万のタイル(1mm方眼紙でつくったもの)を指しながらたずねる。
P(いっせいに)「一万」
T「そうだね。一万だね。これ(10cm×1Ocmのタイル)だね。じゃあ、一万が10集まるといくつ?」
P(いっせいに)「十万」
T「そうね。十万だね。タイルはこれ(1m×10cm)だね。じゃあ、十万が10集まるといくつ?」
P(いっせいに)「百万」
T「百万だね。タイルはこれ(1m×1m)だね。じゃあ、百万が10集まると?」
P(いっせいに)「一千万」「千万」
T「そうね。千万だね。たてが10m、よこが1mの、あのでかくて長いタイルが、千万だね」
T「一、十、百、千、一万、十万……と10集まるごとに上の位に進む数のことを何進数というんだっけ?」
黒板に、□進数と書く。
P「十進数」
T「そうだね。十進数だね。(□に十と書きこむ。)千が10集まると一万、一万が10集まると十万、十万が10集まると百万、百万が10集まると千万になるね。だから、何万、何十万という大きな数も十進数だね」
★一千万までの0のない数の読み方★
T「それでは、これから、その十進数のうち、千万の位までの数を読んだり書いたりする勉強をしよう」
黒板につぎのような位取りのワクを書き、数字を書きこむ。

T「これは、タイルで考えると、千万、百万、十万、一万、千、百、十、一のタイルが、それぞれいくつある数かな? 千万のタイルは?」
P「2つ」
T「そうだね。千万のタイルが2つで二千万だね。つぎの百万のタイルは?」
P「3つ」
T「そう。百万のタイルが3つで三百万。十万のタイルは?」
P「6つで六十万」
T「一万のタイルは?」
P「5つで五万」
T「そうね。あとの四千七百十九はまえに勉強したね。千、百、十、一のタイルがいくつ集まった数かな?」
P「千のタイルが4つ、百のタイルが7枚、十のタイルが1本、一のタイルが9この数です」
T「では、この数字を読める人?」
約3分の1の子が手をあげる。ひとりの子に指名。
P「二千三百六十五万四千七百十九です」
T「そのとおり。よく読めたね。じゃあ、読み方を勉強しよう」
T「千の位から下の数字はみんな読めるだろう」
一万、十万、百万、千万の位の数字は紙で隠して読ませる。

P(いっせいに)「四千七百十九」
紙をとって、こんどは千の位以下をか
くし、
T「一万の位以上の読み方は、二千万、三百万、六十万、五万とは読まないんだ」
こう書きなおしたほうがわかりいいかな、とひとりごとを言いながら、位取りのワクを修正して、

T「二千三百六十五万と読むんだ。全部つづけて読むと、(千の位以下の数字を隠した紙をとって)二千三百六十五万四千七百十九になるね。じゃ、読み方の練習をしよう」
黒板の位取りのワクに、つぎのような0のない数をかきたし、

最初は千の位以下の数字を隠して読ませ、つぎに全部とおして読ませる方法をとった。たとえば、つぎのように。

これはひととおり全員に読ませる。こうして、つぎに数字をかえて0のない場合の数字の読み方を席順に練習した。
★一千万までの0のある数の読み方★
つぎは0のある数の読み方。これは一万の位以上で0が1つある場合、2つある場合、3つある場合の順に扱い、読み方は、最初、このように、0もよむ読み方、つまり、ロボット式で読ませたあと、普通の読み方、つまり、人間式で読ませるようにした。(前号参照)

〈ロボット式読み方〉 → 〈人間式読み方〉
四千れい百二十六万七千三百五十八 → 四千二十六万七千三百五十八
五百れい十二万九千八百れい十れい → 五百二万九千八百
六十れい万九千れい百れい十れい → 六十万九千
八千れい百れい十六万二千れい百三十れい → 八千六万二千三十
四千れい百八十れい万れい千六百れい十れい → 四千八十万六百
こうして、全員が読めるようになってから、位取りのワクを消して4ケタ区切りを教えた。はじめに、位取りを示す文字、一、十、百⋯⋯千万を消し、つぎに一万と千の位のあいだの濃い線のかわりに「,」(コンマ)を入れて、線は全部消して読ませた。

このようにして、千万の位までの数の読み方を指導し、そのあと、となりどうしで、数字をノートに書いて、それを読ませる練習をさせた。
★一千万までの0のない数の書き方(7月12日)★
こんどは数字を書く練習である。すでに問題の出しっこで、数字を読んだり書いたりしているから、だいたいできるのだが、みんなできるようにするには手をぬくわけにはいかない。
まず、千万の位までの数を漢数字で書き、それをみんなで読み、手をあげた子のなかからひとりを指名して、算用数字で書かせた。

T「これであっていますか」
P(いっせいに)「はい」
T「そうね。これでいいね。どうして、こう書いたの? 説明してごらん」
P「三千六百二十五万九千八百四十七は三千六百二十五万と九千八百四十七をあわせた数でしょ。だから、万のところにこう(3625を指して)書いて、それからこう(9847を指して)書いたの」
T「なるほど」
P「先生、口でいうとおりに書くと、そうなるよ」
T「そうね。ところで、この数は千万がいくつあるの?」
子どもたちは、(いっせいに)「3つ」という。なかに「3千万」という子もいる。
T「三千六百二十五万だから、千万は3つだね。だから、千万の位に3と書いたんだね」
と漢数字の三千万と算用数字の千万の位の3を結びつける。同様にして、百万、十万、一万……一について漢数字と算用数字を対応させ、0のない数についての書き方を練習する。

位取りのワクをノートに書いて数字を書くように指示したが、面倒くさいというので、その子たちには4ケタ区切りで数字を書かせる。
★一千万までの0のある数の書き方★
0のない数が書けるのをたしかめて、つぎに、0のある数にすすむ。
漢数字の問題を黒板に書いて、それをノートに算用数字で書かせたが、この段階では位取りのワクのなかに書いた子のほうがまちがいが少なかった。

漢数字と算用数字の位ごとの数字の対応で、0を表わす漢数字がないのでまちがいやすいことから、欠位(算用数字で書いたとき0になる位)のところは0まで読む読み方、いわゆるロボット式読み方にいちどなおして、数字を書くとまちがいが少なくなることを教え、その練習をした。

こうして、位取りのワクをとり、4ケタ区切りでの数の書き方を扱う。ここでも、0のない数から、0を1つ、2つ……とふやしていくやり方をとったが、この場合、何千何百何十何万の万のところで、少し長い間をとって漢数字を読んでやった。以上のような手順をふんで、最後に、口でいった数を算用数字で書かせた。
(後編へつづく)
出典:『ひと』1974年4月号、太郎次郎社
岡田 進 (おかだ・すすむ)
1926年生まれ。千葉県で小学校教員を経て、私塾を主宰。タイルを使ったさまざまな算数教育の実践で知られる。著書に『算数 つまずきの診断と治療』(明治図書)、『これなら楽しくできる 漢字の教え方』(太郎次郎社)、共著書・監修書に『親子で学ぶ算数教室』(日本書籍)、『らくらく算数ブック』1~3、『らくらく数学テキスト』中学1年(ともに太郎次郎社)などがある。
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